誰に宛てたのか不明な書簡。相手は句の初心者で先に点付けを依頼してきたものらしい。しかし、芭蕉はあちこち歩いていて手をつけていなかった。「宿」の語のあるところから旅の最中であったようだ。
夜前罷帰、先日之御巻、点仕候:<やぜんまかりかえり、せんじつのおまき、てんつかまつりそうろう>と読む。前夜(宿に)帰り、先日貴方が送ってきました連句に評点をつけました、の意。
御けいこの為、点ひかへ申候:これは稽古ですから、点は控えめに付けました。この手紙の相手が初心者だったので厳しくは付けなかったの意であろう。
句の味、貴面御物がたり可二申上一候:<くのあじ、きめんおものがたりもうしあぐべくそうろう>と読む。句の味わいというようなことについては、貴方に会ってから直接お話し申し上げましょうの意。
前句二句進覧仕候:<まえくにくしんらんつかまつりそうろう>と読む。前句を書いておきましたからよくご覧になってくださいの意。