江戸から膳所の中尾源左衛門(槐市)・浜市右衛門(式之)宛に書いた書簡。この書簡で、江戸帰着後日本橋橘町彦右衛門宅に寄宿したことが知れる。この頃、『其角集』の編纂中であったことも分かる。槐市・式之を通じた藤堂新七郎宛メッセージでもある。
御発句など被レ遊候はゞ、便に可レ被レ遣候:<おんほっくなどあそばされそうらはば、びんにつかわさるべくそうろう>と読む。発句など詠んだ作品があれば、手紙でお知らせ下さい、の意。
春は其角集あみ申候間、入集可レ仕候:<はるはきかくしゅうあみもうしそうろうかん、にゅうしゅうつかまつるべくそうろう>と読む。来春には其角集を出版しますので、これに投稿して下さい、の意。
私は宿は橘町彦右衛門と申ものゝ店に而:<・・たちばなちょうひこえもんともうすもののたなにて>と読む。私は、只今は日本橋橘町の彦右衛門という人の店に住んでいますので、の意。
書音も広クは六ケしく御座候故、所付をも外へは不二申遣一候之間、左様に御意得被レ成可レ被レ下候:<しょいんもひろくはむずかしくそうろうゆえ、ところづけもほかへはもうしつかわさずそうろうのかん、さようにおこころえなされくださるべくそうろう>と読む。大勢の人々に御知らせするのは大変ですから、住所については他の人々に申し上げませんので、そのようにご承知置き下さい、の意。
御前可レ然奉レ頼存候:<ごぜんしかうるべくたのみたてまつりそうろう>と読む。「御前」は藤堂新七郎を指す。殿様にはよろしくお伝え下さい、の意。重臣である槐市・式之を通じての上奏である。