与次兵へ様 はせを
膳所の門人茶屋与次兵衛こと昌房宛書簡。この日に、京都からとんぼ返りして、再度伊賀に帰郷するのだが、その直前に書いたものらしい。
頃日も毎日無二心元一存候へ共、京都へ上り、罷下候て:<けいじつもまいにちこころもとなくぞんじそうらえども、きょうとへのぼり、まかりくだりそうろうて>と読む。この二三日、芭蕉は京都へ行き、また膳所に戻り、そして今伊賀へ帰郷するのである。
発足前故取重:<ほっそくまえゆえとりかさなり>と読む。「発足」が京都へか、伊賀へかは不明だが、とにかく出発前で忙しくしていて、の意。
其元計へ御暇乞もいかヾに存候而:<そこもとばかりへおいとまごいも・・ぞんじそうろうて>と読む。膳所に沢山いる門人達を差し置いて、あなたのところだけに出発の挨拶というわけにもいかないので、の意。
嘸ぞ嘸ぞ頃日御気盡し、難二申盡一:<さぞさぞけいじつおきづくし、もうしtくしがたし>と読む。この数日、さぞや御心をつかわれたことと、言葉がありません、の意。昌房の家内の病気のことを言っているのであろう。
尚々色々御懇意、筆帋難レ盡候:<なおなおいろいろごこんい、ひっしにつくしがたくそうろう>と読む。ご親切、言葉で表現できません、の意。 。
隙にも成候はば、風雅御はげみ可レ被レ成候:<おひまにもなりそうらわらば、ふうがにおはげみなさるべくそうろう>と読む。おひまになったら、俳諧修業にお励みください、の意。