二月七日
昨日、病気見舞をしたばかり杉風宛に書いた書簡。金沢の誰かに至急の手紙を出す必要があって、その飛脚便を杉風に依頼している。しかも、手紙の上包みは杉風のものとして欲しいと頼んでいる不可解な内容。末尾の句は、「軽み」の実践句で、芭蕉自身期するものがあったようである。
昨夜は御見舞申候而、御痛之事共直々に御物語承、先案(安)堵致候:<さくやはおもいまいもうしそうろうて、おいたみのことどもじきじきにおものがたりうけたまわり、まずあんどいたしそうろう>と読む。芭蕉が杉風の体調などを聞いたのであろう。
此書状、加州金沢へ不レ叶用事申遣し候:<このしょじょう、かしゅうかなざわへかなわざるようじもうしつかわしそうろう>と読む。この書状というのは、この書簡の前半部に加賀金沢の誰かに宛てたよんどころない急ぎの用件の書かれた書簡が付属していたのであろう。だから、この書簡部分は、追伸なのであろう。
何とぞ被レ入二御念一、上包貴様御名を御書被レ成候而:<なにとぞごねんをいれられ、うわづつみきさまおんなをおかきなされそうらいて>と読む。どうか入念に、包の上書きには貴方の名前をお書きになって、の意。
御懇意之方へ御頼被レ遣、返事参候様に奉レ頼候:<ごこんいのかたへおたのみつかわされ、へんじまいるようにたのみたてまつりそうろう>と読む。懇意にしている人に頼んで金沢に届けて頂いて、かつ返事を貰ってくるようにと頼んで下さい、の意。
御家中の風俗、届状不レ届候よし兼而承候間:<ごかちゅうのふうぞく、とどけじょうとどかずそうろうよしかねてうけたまわりそうろうあいだ>と読む。加賀藩では、手紙がしばしば届かないというようなことがあると聞いています、の意。意味不明。
貴様上包に被レ成候而、成程慥に奉レ頼候:<きさまうわづつみになされそうろうて、なるほどたしかにたのみたてまつりそうろう>と読む。貴方を差出人とした手紙に見せかけて、確実に届くように頼んで下さい、というのだがなぜこんなに注意深くやる必要がるのか不明。
少々急候間、能様に被二仰遣一可レ被レ下候:<しょうしょういしぎそうろうかん、よきようにおおせつかわされくださるべくそうろう>と読む。急いでおりますのでうまく行くように是非お願い致します、の意。
発句も延引可レ致と存候へ共、与風所望に逢ひ候而如レ此申候:<ほっくもえんいんいたすべきとぞんじそうらえども、ふとしょもうにあいそうらいてかくのごとくもうしそうろう>と読む。発句はもう少し先に延ばそうと思っていましたが、貴方からの所望に答えて次ぎのように作ってみました。
日比工夫之處に而御座候:<このごろくふうのところにてござそうろう>と読む。私が日頃提唱している「軽み」の句であります、の意。