六月八日
寿貞無仕合もの、まさ・おふう同じく不仕合、とかく難二申盡一候:<じゅていぶしあわせもの、・・、とかくもうしつくしがたくそうろう>。まさもおふうも寿貞の子。乱文にして簡潔だが想いの籠った書き出しである。
好斎老へ別紙可二申上一候へ共:<こうさいろうへべっしもうしあぐべくそうらへども>と読む。好齋へは別に謝礼の手紙を書かなくてはいけないが、の意。好齋は深川芭蕉庵の近くに住む隠者、芭蕉不在のため病臥している寿貞を見舞ってくれていたらしい。Who'sWho参照
万事御肝煎御精御出しの段々先書にも申来:<ばんじおきもいりごせいおだしのだんだんせんしょにももうしきたり>と読む。この個所は、一緒に手紙を見てくれという好斎に対して書いていて、世話になっていることを謝した部分。何もかもお世話になっていることは先に頂いたお手紙にもあったことですが、の意。
扨々辱、誠のふしぎの縁にて、此御人頼置候も、ケ様に可レ有端と被レ存候:<さてさてかたじけなく、まことのふしぎのえにしにて、このおひとたのみおきそうろうも、かようにあるべきはしとぞんぜられそうろう>と読む。それにしても、縁とは不思議なもので、好齋老に(寿貞親子の面倒を見てくれるように)お願いしておきましたのもこんなことがあるかもしれないという虫の知らせがあったればこそでした、の意。
理兵衛:詳細不詳。寿貞の身内か? 細工職人らしい。仕事が無くてもあまり心配しないようにと芭蕉は気遣っている。寿貞の父とする説がある。