- 芭蕉db
半左衛門宛書簡
(元禄2年1月17日 芭蕉46歳)
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書簡集/年表/Who'sWho/basho
- 其元旧年御仕舞も、御不自由に可レ有二御座一候*。此方も永々旅がへり*、何かや取重、毎日毎日客もてあつかひなどに而、冬のしまひもはつはつに*御座候而、金子少も得進じ不レ申候。何とぞ北国下向之節立寄候而成*、関あたりより成とも通路いたし*、しみじみ可二申上一候。別条無レ之内、細々書状にも及び不レ申候間、左様に御意得可レ被レ成候*。
一、山◆御無事に御座候哉。御老人無二心元一存候。
- 一、七郎左衛門方あねじゃ人*、御無事に御座候哉。以上
- 正月十七日 松尾桃青
- 半左衛門様
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- これ以前から伊賀上野の兄松尾半左衛門の家計は窮乏していた。芭蕉は年末には幾許かの仕送りをしていたらしいが、この年は度重なる長旅で自身の経済も逼迫していた模様である。本書簡はその兄に宛てた仕送りなしの通告分である。
文中には、『奥の細道』の旅の後に郷里に立ち寄ることを予告しており、この旅が早くから計画的であったことが分って興味深い。
- 其元旧年御仕舞も、御不自由に可レ有二御座一候:<そこもときゅうねんしまいも、ごふじゆうにござあるべくそうろう>と読む。御仕舞は決算のこと、昨年の年越しにも経済的に困ったことでありましょう、の意。
- 永々旅がへり:昨年貞亨5年(元禄元年)は、『笈の小文』や『更科紀行』の旅に出ていた。
- 冬のしまひもはつはつに:冬の仕舞は、越年の支払決済。「はつはつ」は、やっとできたの意。
- 北国下向之節立寄候而成:<ほっこくげこうのせつたちよりそうろうてなり>と読む。「奥の細道」の旅でも終えたら伊賀に立ち寄るなりして、の意。
- 関あたりより成とも通路いたし:関は鈴鹿近くの関宿のこと。ここから伊賀上野に参りましょう、の意。
- 別条無レ之内、細々書状にも及び不レ申候間、左様に御意得可レ被レ成候:<べつじょうこれなきうち、こまごましょじょうにもおよびもうさずそうろうかん、さようにおこころえなさるべくそうろう>と読む
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七郎左衛門方あねじゃ人:七郎左衛門は広岡雪芝。あねじゃ人は不明。