芭蕉db
   この境、「這ひわたるほど」とい
   へるも、ここの事にや

かたつぶり角振り分けよ須磨明石

(猿蓑)

(かたつぶり つのふりわけよ すまあかし)

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(「蝸牛角ふ里わけよ須磨明石」の句碑、神戸市須磨区須磨浦公園内-070721撮影)


 元禄元年夏。『笈の小文』の終点須磨・明石にて。前詞の「這ひわたるほど」は、『源氏物語』「須磨の巻」では「あかしの浦ははひわたるほどなれば云々」、すなわち須磨と明石の間は這って渡れる程に近い距離だという記述があることによった。

かたつぶり角振り分けよ須磨明石

 カタツムリの二本の角、須磨と明石が「這いわたる」ほどの距離であれば、お前の角で片方は須磨、もう一方は明石を指し示してみよ、というのである。テンポのよい間然するものの無い名句。