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芭蕉db
果の朔日の朝から(俳諧勧進牒)
(せきぞろの くればふうがも しはすかな) 
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 元禄3年師走朔日。ここに「節季候<せきぞろ>」とは、年が押しつまった師走中旬以降から出てくる門付け芸人だが、実態は乞食。なぜかこの年は、師走の朔日に出たというのである。夏の天候が悪く、不作のため、九州地方を中心に各地で逃散が多発し、乞食が増えたのである。節季候は、笠の上にシダの葉をさし、赤い布で顔を覆って目だけ出し、尻っぱしょりをして「せきぞろ、せきぞろ」と叫びながら、戸別に物を貰って歩く。天下公認の乞食。季節を限って乞食を認める、NHK歳末助け合い運動の原形みたいなもの。節季候については、別に一句「節季候を雀の笑ふ出立かな」がある。
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節季候の来れば風雅も師走哉
 節季候が出てくる頃ともなれば、世間と一風ずれている俳諧師である私たちにも師走が実感されてくるというものだ、というのである。節季候の存在は、社会の貧しさであり、それなりの深刻さを持っていたのであろうが、作者芭蕉には微塵も伺えない。社会性が無いのか、そこまで世を捨てたのか、単に歳時記の役割以外には問題視されていない。
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果の朔日の朝から:<はてのついたちのあさから>と読む。「果て」は年末のこと。ゆえに、12月1日をさす。節季候は12月27、8日となれば出なくなる。