伊賀越えの山の中で初時雨に遭遇した。自分はさっそく蓑を腰に巻いたが、寒さの中で樹上の猿たちも小蓑をほしそうな気振りに見えることだ。
この一句、決して動物愛護の精神から猿にも防寒用の蓑をやりたいものだと言っているのではない。初時雨や哀猿は、古来日本文学のキータームであった。芭蕉はこれを俳諧化して「小蓑を欲しげなり」としたのである。
三重県阿山郡大山田村長野峠にあった句碑。「この句碑に出会った時は嬉しかった」と森田武さんの添え書きがありました。旅人には不案内な伊賀の山中で、迷いまよいようやく発見したもののようです。