芭蕉db

この梅に牛も初音と鳴きつべし

(江戸両吟集)

(このうめに うしもはつねと なきつべし)


菅原道真座像

句集へ 年表へ Who'sWhoへ


 延宝4年2月の作。33歳。山口素堂との『江戸両吟集』第一巻の発句。『江戸両吟集』は湯島天満宮への奉納俳諧である。

この梅に牛も初音と鳴きつべし

 梅とくれば鶯というのが和歌的伝統的取り合わせである。ただし、この梅は天満宮の梅であるから、菅原道真ゆかりの梅でもある。道真とくれば牛という取り合わせが無いわけではない。 これが談林派的に新たな「俳諧」的取り合わせであろう。
 この天満宮の美しい梅の花なら、鶯でなくたって初音を上げたくなるであろう。天神様ゆかりの牛でさえもが 「ホーホケキョ」に替わって「モー」と「初音」を上げるかもしれない、というのが一句の意味。梅と鶯という詩的定型をはずして、牛を持ってきてなお初音という、談林俳諧を代表する一句でもある。