芭蕉db

蓮の香を目にかよはすや面の鼻

(真蹟短冊)

(はすのかを めにかよわすや めんのはな)

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  元禄7年夏。能役者本間主馬の屋敷を訪問したときの句。この折の句としては、「ひらひらと挙ぐる扇や雲の峰」と「稲妻や顔のところが薄の穂」がある。
 能の面の鼻には穴があいていて、能役者は演技中下の方は鼻の穴から見るという。文字通り目から鼻に通じているのである。

蓮の香を目にかよはすや面の鼻

 主馬の屋敷にはハスの花が咲いている。あなたは能の名人だから、その馥郁たる香りが鼻から入って目にまで達するのであろう。私などは鼻でおしまいなのだけど。屋敷の主人への挨拶吟。