芭蕉db

紫陽花や薮を小庭の別座舗

(俳諧別座舗)

(あじさいや やぶをこにわの べつざしき)

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 元禄7年5月上旬。最後の西上の旅を前にして子珊の別座敷で開かれた送別歌仙の際の発句。 子珊編『別座舗』はこれを発句として編纂された。

紫陽花や薮を小庭の別座舗

 むやみと手の入った庭ではなく子珊の別座敷の庭は自然のままの庭であった。そこにはアジサイが梅雨を待つように咲いていたのである。永の別れになることを参列者たちは知っていたから座は寂しいものであった。
子珊の筆になる『別座敷 序』には、

 
「翁近く旅行思ひたち給へば、別屋に伴ひ、春は帰庵の事を打ちなげき、さて俳諧を尋ねけるに、翁『今思ふ体は、浅き砂川を見るごとく、句の形、付心ともに軽きなり。其の所に至りて意味あり。』と侍る。いづれも感じ入りて、及ばずも此の流れを慕ふ折ふし、庭の夏草に発句を乞ふて、咄ながら歌仙終りぬ。」
とある。
 なお、この句につづく脇は子珊が取り、

よき雨あひに作る茶俵

であった。
 

豊橋市二川町妙泉寺にある句碑(森田武さん撮影)