消費者行動論 #5  2001/11/15


◆お知らせ◆

(まだ予定ですが)12月13日(木)の消費者行動論は, 16時10分〜17時10分に変更し, 消費生活センターの代永まつ子氏による特別講義とします。
消費生活上のトラブル等についてお話しいただきます。
登録した受講生以外にも開放します。

■感想より

●価格のところで,\200と\198では2円しか違わないのに,\198の方が安い!と思ってしまう。ついつい手に取ってしまう…。/なぜ,映画館とか,スナック菓子とか,ジュースが高いのだろう?

●知覚の所は具体例は分かるが文章だと難しかった。販売者は消費者のためにいろいろなことを考えているんだなぁと思った。

●知覚とマーケティング戦略については興味深く,聞いていて納得した。特に価格の端数価格や威光価格の設定により,私は商品を買うとき,とても惑わされているような気がする。マーケティング戦略は奥が深いと思った。また欲求の階層構造もとても自分自身に当てはまると思う。


■消費者行動の心理学


1.問題解決としての購買意思決定


2.消費者の知覚


3.消費者の動機づけ

▼欲求(ニーズ)の階層構造
・マズロー(1970)による整理
 (1) 生理的欲求 physiological needs
    生理的自己の維持;食欲など
 (2) 安全欲求 safety-security needs
    苦痛・恐怖・不安・危険などを避け,安定を求める
    見慣れたものを求める欲求も含まれる
 (3) 所属と愛の欲求 belongingness-love needs
   (または 社会的欲求 social needs
    他者との友好・愛情関係や集団への所属を求める
 (4) 自尊欲求 esteem needs
    自己に対する高い評価を求める
    業績,技能,資格,自信,評判,注目などへの欲求
 (5) 自己実現欲求 self-actualization needs
    自己の成長や発展の機会を求める
    この欲求だけは,満足されるとさらに欲求が強まる
━━━━━━━━━前回ここまで━━━━━━━━━

・消費者行動との関連
  現代の消費パターンの多様化
  =自尊欲求や自己実現欲求の高まりの現れ

▼購買動機の要因
必要条件
  ・購入にあたって最低限求める品質
魅力条件
  ・品質とは無関係に満たしていて欲しい思う条件

▼モチベーション・リサーチ
 (深層心理的アプローチ)
…主として面接による購買行動の詳細な研究

・無意識・潜在意識の発見
 …購買意志決定における消費者本人が意識していない要因
・非合理的・非論理的・情緒的な要因の重視
 …人々が言う購買理由は「合理化」であることが多い


4.ライフスタイルと消費者行動


・従来のマーケット・セグメンテーション(市場細分化)
 =性別・年齢・地理的特性などを基準としてきた
 →価値観の多様化で不都合
 →ライフスタイルからのアプローチを重要視

主婦のライフスタイルの例(小嶋ら,1978)

 (1) おしゃれ行動型(23.8%)
  30代に多い。趣味やレジャー行動が盛ん。
  家事にも工夫。
 (2) 浪費エンジョイ型(16.5%)
  20代に多い。流行やファッションに関心。
  計画性に欠ける。
 (3) 消極無気力型(24.1%)
  収入が低め。趣味やレジャーへの関心が低い。
  (1)と対照的。
 (4) ガッチリ堅実型(16.5%)
  計画的な買物,家事。節約を心がけ,
  貯蓄を重視。
 (5) ハイライフ志向型(19.1%)
  一流品を重視。交際も多い。
  現在の生活を重視。


5.消費者の態度形成と変容

ある商品やサービスへの態度
 =その対象に対する判断や感情などの評価の全体
 ・方向性:好き/嫌い,良い/悪い
 ・強さ:大好き,嫌いではない,など

▼広告戦略と態度変容
・ある属性に関する評価を改善させる
・ある属性の重要性を変化させる
・全く新しい属性を付加する
・競合商品への評価を低下させる

▼説得的コミュニケーションと態度
・メッセージの送り手
 ・信憑性=専門性+信頼性

・メッセージのありよう
 ・一面呈示と両面呈示
  ・両面呈示=長所とともに短所も伝える
 ・恐怖喚起コミュニケーション

━━━━━━━━━ここまで━━━━━━━━━

▼段階的勧誘法
・フットインザドア技法 (FITD)
   はじめに小さな依頼に応じさせ,その後,
   本命の大きな依頼をする
・ドアインザフェイス技法 (DITF)
   先に大きな依頼をわざと断らせてから,
   譲歩する形でより小さな本命の依頼をする

  第1段階     第2段階  
FITD get Yes!
(小さい要求)
get Yes!
(本命の要求)
DITF get No!
(大きい要求)
get Yes!
(本命の要求)

▼態度と行動の関連性
・フィッシュバインとアイゼンの説明

※「購買への態度」であって「商品への態度」ではない
※社会規範=“人からどう見られるか”

・その他の要因
 ・状況要因
  ・実際の店頭場面での状況によって行動が左右される
 ・個人的要因
  ・その時の個人的状況によって行動が左右される
 ・態度形成のなされ方
  ・体験に基づいて形成された態度は,行動との
   結びつきが強い



6.消費者行動における状況要因

▼価格判断における状況要因
  同じ商品が同じ価格で売られていても,状況によって
  高く感じたり安く感じたりする
  ・周りのものの価格と比べて判断
  ・「正月」「お祭り」「旅行先」などのシチュエーション



▼店舗内消費者行動における状況要因
 計画購買と非計画購買
 ・非計画購買の4類型
  ・想起購買:店頭で必要性を認識する
    →商品の必要性を喚起する売場内広告の設置など
  ・関連購買:購入した他の商品との関連から購入
    夕食のメニューにしたがって購買する場合など
    →関連のある商品を接近させて陳列
  ・条件購買:そのうち買おうと思っていたものを購入
    →「本日限り」「今が旬」などと訴える
  ・衝動購入:その場で欲求が喚起される
    →売場で調理し食欲を刺激,商品の希少性などをPR

◆トピックス:
【店舗内での販売促進のための陳列技術】
  ・パワー品目の活用
    肉・魚・野菜・卵・牛乳などを分散配置
  ・大量陳列
  ・右側優位の原則
  ・バーチカル(垂直)陳列
  ・エンド(端)陳列
  ・関連陳列

▼消費者に影響を与える状況要因
・コミュニケーション状況
  商品に関する情報がどのように伝達されるか
  ・店員や友人との会話など(パーソナル)
  ・広告,出版物など(インパーソナル)

・購買状況
  製品やサービスを得る場面の状況
  1.情報環境
    情報の利用可能性,情報付加,情報の提示方法など
  2.店舗環境
    レイアウト,色彩,照明,音楽,におい,温度など
    ◆実証研究の結果から:
     ・テンポの遅い音楽→買物時間・買物量が増える
     ・適切な色彩:内装=寒色,外装=暖色
     ・混雑→買物時間の短縮,店員との接触の減少
  3.時間の影響
    季節,時刻,買物に使える時間の量など



7.対人・集団の要因と消費者行動

▼口コミと消費者行動
・口コミ
  =商品やサービスについて消費者同士で行われる
   コミュニケーション

・口コミが発生する条件
  ・製品の評価が難しい場合
     情報不足,能力不足など
  ・人に聞くことが手軽な手段である場合
  ・「話したい」と思う場合
     製品への強い関心,役に立ちたいという気持ち

・口コミの特徴
  ・非計画的 ⇔広告
  ・発信者によって一度処理された情報
   →受信者は理解しやすい
   →偏った情報となる危険性も

・購買決定における口コミの役割
  ・ブランドの認知や魅力増大には広告が有効
  ・ブランドの評価や採用には口コミが有効

▼情報の伝播と消費者行動
・情報の2段階の流れとオピニオンリーダー


・オピニオンリーダーの特徴
 ・商品情報に精通し,人を納得させる力量を持つ
 ・偏らずに情報を評価する能力を持つ
 ・活動的・社交的
 ・社会地位や価値観が類似したリーダーが信頼される
 ・新製品の購入が早く,他者の購入のリスクを低減させる

・ネットワーク型の新しいオピニオンリーダー
 ・情報発信能力の他に,情報受信力,情報処理能力が重視される

・新製品の普及とイノベータ
 ・イノベータ(革新者):最も早い時期に製品を採用する人;
    全体の2.5%程度
 ・採用の流れ:イノベータ→初期採用者
        →前期多数採用者→後期多数採用者→遅延者
 ・オピニオン・リーダーほど社会的関係は強くない

▼集団の影響と消費者行動
・集団への同調と逸脱
  ・同調行動:集団や社会に合わせた態度や行動の変化
   ・集団の期待に添うための行動
   ・確かな選択基準がないので集団の行動を真似る行動
   ←→逸脱行動

・流行についてのジンメルの理論
 =同調の欲求と差別化の欲求の拮抗

・準拠集団と消費者行動
 ・準拠集団=人の判断の拠り所となる集団
  ・さまざまなグループが準拠集団となりうる
   ・会社・学校などの公式集団
   ・友人,知人,近隣の人などの非公式集団
   ・芸能人や著名人など

 ・準拠集団を意識させる広告戦略
   ・専門家:客観性・信頼性をイメージさせる
   ・憧れの集団:素敵な生活をイメージさせる
   ・自分と同程度の集団:常識を想定させる

 ・生活様式の多様化により,準拠集団の与える影響は
  小さくなっていると考えられる


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