消費者行動論 #4  2001/11/08


■感想より

●今日の講義は,自分にとって関係のあることが問題だったので,とても面白かった。

●お茶のペットボトルを透明に変えたり,スーパーの袋を燃やしても有害ガスが出ないようにしたのは,ソーシャル・マーケティングに含まれるのだろうか。

    ⇒微妙なところだが,そう言ってもいいかもしれない。
    ソーシャル・マーケティング(社会志向マーケティング)では,企業の利益・消費者の満足・社会の利益の調和を図ることが求められる,とされる。


■消費者行動の心理学


1.問題解決としての購買意思決定


2.消費者の知覚

※知覚=心理学用語;
    外界の情報を五感を通じて入手し,意味づけすること
※ここでは特にマーケティング情報の知覚を扱う

▼知覚と情報処理過程


接触過程
・接触の選択的性質
  人は接触する刺激(*)のすべてを受容するわけではない。
  →接触の回避;例:テレビCM,ダイレクトメール

*刺激:心理学用語。人間の行動を,外界の刺激に対する反応として捉える。
注意過程
・刺激要因
  ・物理的特性:大きさ,色,音,動きなど
  ・認知的特性:孤立,対比,情報量など
  ・情緒的特性:子ども,動物,女性モデルなど
・個人要因
  個人的な興味,価値観,ニーズなどが注意に影響を与える
・環境要因
  時間の余裕,気候の快不快など

解釈過程
解釈=刺激に意味を割り当てること
・自動処理
  ・見慣れた刺激→自動的に処理
  ・見慣れない刺激→注意を働かせ意識的に処理
・理解レベル
  ・同じ商品を見ても理解のレベルによって受け取る意味が
   異なる
  ・深く理解された商品は,より強く記憶される

▼知覚とマーケティング戦略
※復習
●マーケティング・ミックス(4P)の構築
(1) 製品 product
(2) 価格 price
(3) 流通 place
(4) 販売促進 promotion

・製品
  ・ブランド・イメージ
    ・ブランドについての知覚の総合されたもの
    ・購買行動の基準となる
    →ブランド戦略:
      競合するブランド間でどのような位置をとるか
  ・ブランドネーム,ロゴ,パッケージデザイン,広告
    =商品解釈に影響を与える

・価格
  ・端数価格:数字から受ける印象をもとに価格設定
  ・威光価格:高い価格設定→高品質・ステータスのイメージ
  ・慣習価格:固定化して,価格で判断されない
        例:清涼飲料水

・流通
  小売業者:消費者の情報との接触に工夫
   例:陳列棚のレイアウト,商品ごとの陳列場所

・販売促進
  接触を増やし注意を向けさせるためにさまざまな工夫
  ・メディア戦略
    ・ランダムな接触を増やす戦略
    ・ターゲットを絞った戦略



3.消費者の動機づけ

▼欲求(ニーズ)の階層構造
・マズロー(1970)による整理
 (1) 生理的欲求 physiological needs
    生理的自己の維持;食欲など
 (2) 安全欲求 safety-security needs
    苦痛・恐怖・不安・危険などを避け,安定を求める
    見慣れたものを求める欲求も含まれる
 (3) 所属と愛の欲求 belongingness-love needs
   (または 社会的欲求 social needs
    他者との友好・愛情関係や集団への所属を求める
 (4) 自尊欲求 esteem needs
    自己に対する高い評価を求める
    業績,技能,資格,自信,評判,注目などへの欲求
 (5) 自己実現欲求 self-actualization needs
    自己の成長や発展の機会を求める
    この欲求だけは,満足されるとさらに欲求が強まる
━━━━━━━━━ここまで━━━━━━━━━

・消費者行動との関連
  現代の消費パターンの多様化
  =自尊欲求や自己実現欲求の高まりの現れ

▼購買動機の要因
必要条件
  ・購入にあたって最低限求める品質
魅力条件
  ・品質とは無関係に満たしていて欲しい思う条件

▼モチベーション・リサーチ
 (深層心理的アプローチ)
…主として面接による購買行動の詳細な研究

・無意識・潜在意識の発見
 …購買意志決定における消費者本人が意識していない要因
・非合理的・非論理的・情緒的な要因の重視
 …人々が言う購買理由は「合理化」であることが多い


4.ライフスタイルと消費者行動


・従来のマーケット・セグメンテーション(市場細分化)
 =性別・年齢・地理的特性などを基準としてきた
 →価値観の多様化で不都合
 →ライフスタイルからのアプローチを重要視

主婦のライフスタイルの例(小嶋ら,1978)

 (1) おしゃれ行動型(23.8%)
  30代に多い。趣味やレジャー行動が盛ん。
  家事にも工夫。
 (2) 浪費エンジョイ型(16.5%)
  20代に多い。流行やファッションに関心。
  計画性に欠ける。
 (3) 消極無気力型(24.1%)
  収入が低め。趣味やレジャーへの関心が低い。
  (1)と対照的。
 (4) ガッチリ堅実型(16.5%)
  計画的な買物,家事。節約を心がけ,
  貯蓄を重視。
 (5) ハイライフ志向型(19.1%)
  一流品を重視。交際も多い。
  現在の生活を重視。


5.消費者の態度形成と変容

ある商品やサービスへの態度
 =その対象に対する判断や感情などの評価の全体
 ・方向性:好き/嫌い,良い/悪い
 ・強さ:大好き,嫌いではない,など

▼広告戦略と態度変容
・ある属性に関する評価を改善させる
・ある属性の重要性を変化させる
・全く新しい属性を付加する
・競合商品への評価を低下させる

▼説得的コミュニケーションと態度
・メッセージの送り手
 ・信憑性=専門性+信頼性

・メッセージのありよう
 ・一面呈示と両面呈示
  ・両面呈示=長所とともに短所も伝える
 ・恐怖喚起コミュニケーション

▼段階的勧誘法
・フットインザドア技法 (FITD)
   はじめに小さな依頼に応じさせ,その後,
   本命の大きな依頼をする
・ドアインザフェイス技法 (DITF)
   先に大きな依頼をわざと断らせてから,
   譲歩する形でより小さな本命の依頼をする

  第1段階     第2段階  
FITD get Yes!
(小さい要求)
get Yes!
(本命の要求)
DITF get No!
(大きい要求)
get Yes!
(本命の要求)

▼態度と行動の関連性
・フィッシュバインとアイゼンの説明

※「購買への態度」であって「商品への態度」ではない
※社会規範=“人からどう見られるか”

・その他の要因
 ・状況要因
  ・実際の店頭場面での状況によって行動が左右される
 ・個人的要因
  ・その時の個人的状況によって行動が左右される
 ・態度形成のなされ方
  ・体験に基づいて形成された態度は,行動との
   結びつきが強い



6.消費者行動における状況要因

▼価格判断における状況要因
  同じ商品が同じ価格で売られていても,状況によって
  高く感じたり安く感じたりする
  ・周りのものの価格と比べて判断
  ・「正月」「お祭り」「旅行先」などのシチュエーション



▼店舗内消費者行動における状況要因
 計画購買と非計画購買
 ・非計画購買の4類型
  ・想起購買:店頭で必要性を認識する
    →商品の必要性を喚起する売場内広告の設置など
  ・関連購買:購入した他の商品との関連から購入
    夕食のメニューにしたがって購買する場合など
    →関連のある商品を接近させて陳列
  ・条件購買:そのうち買おうと思っていたものを購入
    →「本日限り」「今が旬」などと訴える
  ・衝動購入:その場で欲求が喚起される
    →売場で調理し食欲を刺激,商品の希少性などをPR

◆トピックス:
【店舗内での販売促進のための陳列技術】
  ・パワー品目の活用
    肉・魚・野菜・卵・牛乳などを分散配置
  ・大量陳列
  ・右側優位の原則
  ・バーチカル(垂直)陳列
  ・エンド(端)陳列
  ・関連陳列

▼消費者に影響を与える状況要因
・コミュニケーション状況
  商品に関する情報がどのように伝達されるか
  ・店員や友人との会話など(パーソナル)
  ・広告,出版物など(インパーソナル)

・購買状況
  製品やサービスを得る場面の状況
  1.情報環境
    情報の利用可能性,情報付加,情報の提示方法など
  2.店舗環境
    レイアウト,色彩,照明,音楽,におい,温度など
    ◆実証研究の結果から:
     ・テンポの遅い音楽→買物時間・買物量が増える
     ・適切な色彩:内装=寒色,外装=暖色
     ・混雑→買物時間の短縮,店員との接触の減少
  3.時間の影響
    季節,時刻,買物に使える時間の量など



7.対人・集団の要因と消費者行動

▼口コミと消費者行動
・口コミ
  =商品やサービスについて消費者同士で行われる
   コミュニケーション

・口コミが発生する条件
  ・製品の評価が難しい場合
     情報不足,能力不足など
  ・人に聞くことが手軽な手段である場合
  ・「話したい」と思う場合
     製品への強い関心,役に立ちたいという気持ち

・口コミの特徴
  ・非計画的 ⇔広告
  ・発信者によって一度処理された情報
   →受信者は理解しやすい
   →偏った情報となる危険性も

・購買決定における口コミの役割
  ・ブランドの認知や魅力増大には広告が有効
  ・ブランドの評価や採用には口コミが有効

▼情報の伝播と消費者行動
・情報の2段階の流れとオピニオンリーダー


・オピニオンリーダーの特徴
 ・商品情報に精通し,人を納得させる力量を持つ
 ・偏らずに情報を評価する能力を持つ
 ・活動的・社交的
 ・社会地位や価値観が類似したリーダーが信頼される
 ・新製品の購入が早く,他者の購入のリスクを低減させる

・ネットワーク型の新しいオピニオンリーダー
 ・情報発信能力の他に,情報受信力,情報処理能力が重視される

・新製品の普及とイノベータ
 ・イノベータ(革新者):最も早い時期に製品を採用する人;
    全体の2.5%程度
 ・採用の流れ:イノベータ→初期採用者
        →前期多数採用者→後期多数採用者→遅延者
 ・オピニオン・リーダーほど社会的関係は強くない

▼集団の影響と消費者行動
・集団への同調と逸脱
  ・同調行動:集団や社会に合わせた態度や行動の変化
   ・集団の期待に添うための行動
   ・確かな選択基準がないので集団の行動を真似る行動
   ←→逸脱行動

・流行についてのジンメルの理論
 =同調の欲求と差別化の欲求の拮抗

・準拠集団と消費者行動
 ・準拠集団=人の判断の拠り所となる集団
  ・さまざまなグループが準拠集団となりうる
   ・会社・学校などの公式集団
   ・友人,知人,近隣の人などの非公式集団
   ・芸能人や著名人など

 ・準拠集団を意識させる広告戦略
   ・専門家:客観性・信頼性をイメージさせる
   ・憧れの集団:素敵な生活をイメージさせる
   ・自分と同程度の集団:常識を想定させる

 ・生活様式の多様化により,準拠集団の与える影響は
  小さくなっていると考えられる


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