消費者行動論 #2  2001/10/18


■消費者と生産者との関係の大まかな歴史

▼自給自足
・生産者と消費者は同一
・生産地と消費地もあまり離れていない
※集団内での交換はあっても,家族のようなもの

▼分業の誕生
・分業=交換もしくは販売を前提として成立
・生産者と消費者は別人
・生産者:交換・販売を目的に,他人が消費するものを(消費者の必要に応じて)生産

▼市場(しじょう)生産の誕生
・消費者の注文が無い状態で生産し,市場に出す
・市場が小さければ生産者と消費者はほぼ対等
  ・お互いをよく知っている
  ・製品知識にあまり差がない

▼消費社会の誕生
・市場の拡大〜大量生産・大量消費時代
・生産者と消費者の距離が開く→お互いの顔が見えない
  市場生産=見えなくなった消費者相手の見込み生産
・需要の飽和→マーケティングの誕生
・生産者・販売者は巨大化(生産者の企業化,流通の拡大)
  →生産者と消費者は対等でなく生産者優位に

★「自由競争市場」の前提

(1)公正で自由な価格競争
(2)売手買手の完全な市場知識

 →いずれも不成立
   「操作する企業」と「操作される消費者」

  →消費者問題
  →消費者運動・消費者保護

▼大量消費社会の見直しへ
 ・環境問題:ごみ,資源・エネルギー,環境汚染など
  ※アメリカ人の生活を60億人がしたら地球が5個必要
   との計算あり

  →新しいライフスタイルの模索



■市場とマーケティング
●マーケティングとは
企業が行う財やサービスの販売を拡大するための活動

《参考》

マーケティングとは,価値を創造し,提供し,他の人々と交換することを通じて,個人やグループが必要とし欲求するものを獲得する社会的・経営的過程である。
(コトラー『マーケティング・マネジメント』プレジデント社,1996)


マーケティング(マネジメント)は,個人や組織の目的を満足させる交換を創出するためのアイデア,財,サービスの概念形成,価格設定,プロモーション,流通を企画し,実行する過程である。
(アメリカ・マーケティング協会,1985)


マーケティング marketing
大量生産と大量消費のメカニズムを円滑に回転させるために,財とサーヴィスの全流通過程を生産者あるいは流通機構の手中に管理する,企業経営の組織的活動。その基本は,消費者に対して財とサーヴィスを購入したいという欲望を起こさせることである。(以下略)
(『社会学小辞典』有斐閣,1997(新版))

●市場の発展とマーケティング・コンセプトの変化
A.生産志向と製品志向の時代
・販売努力の不要な時代;いかに製品を供給するか

B.販売志向の時代
・大量生産された製品をいかに買わせるか

C.消費者志向と顧客志向のマーケティング
・消費者の望む製品を作る
・顧客満足を高める

D.リレーションシップ・マーケティング
・顧客との長期的な関係づくり
・双方向的なコミュニケーション

●市場細分化(マーケティング・セグメンテーション)戦略
消費者の欲求の多様化
→同じような欲求を持った消費者のグループをターゲットとして商品を開発し販売するのが効率的

●マーケティング・ミックス(4P)の構築
(1) 製品 product
(2) 価格 price
(3) 流通 place
(4) 販売促進 promotion

●ソーシャル・マーケティング
社会的な生活環境や自然環境の保護を考慮に入れたマーケティング



★消費者行動論:豊かな消費社会が前提
・貧しい時代は最低限の衣食住で精いっぱい
  →豊かな社会になってさまざまな消費者行動が出現
・販売拡大を目的とした消費者行動論
   =消費社会の善悪は問わない
    (消費拡大→経済発展→良い,という前提)
 ←→欲望の無限の拡大でなく,欲望のコントロールへ

「豊かな社会」についてのカトーナの整理

経済環境の5つの変化
  (1) 収入の増大
  (2) 貯蓄資産の増大
  (3) 信用販売(月賦・クレジット)の普及
  (4) 消費全体における非必需耐久財の
    占める比率の増大
  (5) マスコミによる経済情報の迅速な伝搬
消費者行動の3つの変化
  (1) 必需的・慣習的・契約的消費の減少
  (2) 自由裁量的支出の増大
  (3) 自由裁量的貯蓄・投資の増大



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