ふじざくら No.19

山梨県立女子短期大学図書館(2002.3)




韓国映像メディアに見る新しい対日イメージ


生活科学科助教授 大西康雄

 今年は日韓国民交流年とされている。そこで日韓関係に関連する話題を扱ってみたい。
 日本でも『シュリ』を契機に韓国映画へ関心が向くようになったが、韓国では最近映画の観客動員数が著しく増え、映画が映像メディアの中で最も重要な地位を占めている。しかも国産映画のシェアが著しく高い(40%以上、一方日本の国産映画シェアは15%前後)
 金素英(2000)は韓国ブロックバスター映画における韓国女性の不在を指摘しているが、『シュリ』、『JSA』といった映画を見れば分かるように、現在の韓国の映画メディアにおける特徴として男性的ロジックの優越が指摘できる。その一方で韓国映像に見る日本イメージもかつての植民地支配者としての伝統的なもの(例えば『ユリョン』)だけでなく、新しいイメージが生まれている。それは新しい女性的ロジックの象徴としてのイメージである。 例えばイ・ジェヨン監督による日韓合作『純愛譜』は、冴えない男性主人公が魅力的な女性たちに一方的に思いを寄せる話であるが、登場女性たちは皆日本のイメージに重ねあわされている(女性主人公は日本人である)。また昨年韓国で大ヒットした『猟奇的な彼女』(日本でも公開予定)は、男の子がやりたい放題の彼女(韓国女性のイメージからは型破り)に振り回されて散々苦労させられるラブコメディであるが、この一場面に彼女が剣道で男子学生をやり込める一シーンがある。 日本起源である剣道を通じて、彼女のイメージが日本にシンボライズされた場面である。その一方で韓国映画に登場する中国人女性はむしろ伝統的な女性観を強化するものとして描かれている(例えば『パイラン』、『飛天舞』など)。韓国から見た新しい日本のイメージとは、「わがままで時に手に負えないけれども、とても魅力的な女性」であり、それに対し韓国自身は「時にけんかしながらもその相手に忍耐強く付き合っていく男性」なのではないかと私は考えている。 そして教科書問題などの対応を見ても、このような対日イメージが政治的領域も含んだ幅広い領域に拡大していくと予想している。このようなイメージは決して突然生まれたのではなく鄭大均(1998)が指摘している愛憎半ばするアンビバレントな対日感情の延長にあるように思われるのである。

参考文献 

金素英(キム・ソヨン), 2000,「消えゆく女性たち」,『ユリイカ』 2001年 11月号

鄭大均(チョン・デギュン),1998,『日本(イルボン)のイメージ』中公新書


参考映像資料

『JSA』, 2000, クァク・キョンテク監督(DVD:アミューズ)

『シュリ』, 1999, カン・ジェギュ監督(DVD:アミューズ)

『純愛譜』, 2000, イ・ジェヨン監督(配給:松竹)

『パイラン(白蘭)』, 2001,ソン・ヘソン監督(DVD:Premire Entertainment[韓国])

『飛天舞』, 2000, キム・ヨンジュン監督(DVD:Spectrum DVD[韓国], 日本公開予定あり)

『ユリョン(幽霊)』, 1999, ミン・ビョンチョン監督(DVD:日活)

『猟奇的な彼女』, 2001, クァク・ジェヨン監督(DVD:Starmax[韓国], 日本公開予定あり)





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本の散歩道



本と私

事務局次長 山本美智子

 私は引っ込み思案の性質が災いしてか、近所に遊び相手も殆どいない有り様で、着せ替え人形遊びやラジオの「笛吹童子」「紅孔雀」などを聞いて、ひとり空想や夢の世界に浸っているような可愛げのないこどもであった。
 小学校でも図書委員を仰せ付かると、それを口実に図書室に入り浸り「怪盗ルパンシリーズ」「秘密の花園」などに夢中になり、中・高時代は、「赤毛のアンシリーズ」「嵐が丘」「ジェーン・エア」などを読み、素敵な出逢いや素晴らしい出来事が我が身に起こりうることを夢みていた。
 年頃になり夢みるような出逢いでもなかったが、人なみに愛を知り、結婚し、子供を育てるという日常生活を行き始めた頃から、夫や子どもという現実が、私の空想的意識を遠のかせていった。
 しかし、それらも一段落すると、こんどはミステリーの世界に引きずり込まれていった。
 アガサ・クリスティの筆により命を与えられた「ポアロもの」「ミス・マープルもの」である。イギリスの田舎町、頑固で口髭をたくわえた退役軍人、口やかましい家政婦、うわさ話に余念のない老婦人たち・・・・彼らは小説の中で生き生きと動き、おしゃべりをしている。私も彼らの一員となり行動しているような気分になれた。
 こうしてみると、外国の本が圧倒的に多い。これも自分では体験できない世界に憧れが強いのかもしれない。今度生まれてくるならば、ブロンドの絶世の美女・・・・なんてね・・・。
 最後に、かれこれ20年ちかく愛読している本がある。「ガラスの仮面」。マンガ本である。いまだに連載中で完結していないが、思い出したように再読させられて、その都度、青春の熱気を遠い日に見失った私に、「ひとは情熱なしには何も成し得ない」と教えてくれるし、もうひとりの自分になりたいという夢を実現してくれている。
 そう言えば昔から、マンガお宅の私ではあった。(ただし、マンガは日本の作品に限る。何故って・・・ご想像におまかせします)




『檸檬』と出会った頃

国文科教授 吉川豊子

 幼い頃からどんな読物であれ、お話に引きずり込まれる性質で、幼稚園の頃、呑み込まれた鯨からピノキオを助け出そうと裁物ばさみを持ち出し、絵本の魚を斬ってしまったこともあったが、少女時代の私はいわゆる「文学(読書)少女」ではなかった。小学・中学時代の私は、思いっきり身体をつかって遊ぶことが大好きな「お転婆さん」で、「女の子」という自覚もなく男子とプロレスごっこに興じ、自転車の遠乗りも男子と一緒、日が暮れるまでワイワイ犬のように遊んでいた。 その一方、屋内で手を動かし、一人でものを作ることにも熱中した。お絵かき、工作、作文が得意で、「学級新聞」、「学校新聞」に夢中になった。脳天気な「ひまわり少女」だったのである。
 そんな私が文学や読書の世界に目覚めたのは、洋画家になるという「お絵かき少女」のマシュマロのような夢が、父の病気のため、にわかにしぼんだ高校一年の秋のこと。生活の目標を見失い、憂鬱と倦怠感にとらわれていた当時、高校の図書室の書架で見つけた『檸檬』との出会いがきっかけだった。古ぼけた茶色の皮の背表紙に書かれた「檸檬」という得体の知れない漢字が、まず、眼に飛び込んで来た。手にした本の表紙の和紙の手触りがなんともいえない温もりを伝えて来たことを昨日のように思い出す。 図書室で一気に読み終えた時、主人公の憂鬱と倦怠を木っ端微塵に吹き飛ばした一個の檸檬は、私にも同じ効果をもたらした。言葉がよびさます想像の飛翔力ともいうべきものを、私は生まれて初めて実感したように思う。「檸檬」をはじめ、単行本所収の梶井基次郎の短編作品に流れる乾いたポエジーは、それまで卵を温めるように胸中に抱えていた太宰治の世界の湿度≠私に気付かせてくれた。まもなく、私は急速に評論に親しむようになっていく。
 当時、サルトルとボーヴォワールが来日し、ボーヴォワール・ブームがあった。出来たばかりの渋谷「東急プラザ」の紀伊国屋書店で、私は翻訳されたばかりのボーヴォワールの『娘時代』を買った。それから、学校帰りによく紀伊国屋に立ち寄るようになった。コリン・ウィルソンの『アウト・サイダー』、フロムの『自由からの逃走』など、学校の勉強そっちのけで読んだ。友達や先生よりそれらの本の中に出てくるヨーロッパの知識人たちが身近な存在に思え、高校の日常生活からの離脱感が心地よかった。
 小林秀雄の評論から何人かの文学者、芸術家の生涯を知り、現実からの「浮遊感」としてある<美>のひんやりとした感触にもかすかに触れたように思う。こうして、私はその後何度も繰返されることになる自由と現実、自己と他者の葛藤≠ようやく人並みに生きはじめたのだが、当時、初めて入った喫茶店で飲んだコーヒーを「大人の味覚」として陶酔しながら嚥下したように、若い私は、生れて初めて経験した「人生のつまずき」の苦さに酩酊していたのだった。







本学先生の研究書紹介

『あなたが「いる」ことの重み』

藤谷 秀 著 (青木書店,2001年 10月刊)

 「哲学は驚きから始まる」と言われてきました。確かに、何かに驚き言葉を失うことが哲学の原体験としてあるように思います。私の場合それは、人の死に対する驚き、したがってまたこの世界に(自分自身も含めて)誰かがいるということに対する驚きでした。それを胸にしまいこみ、あるいはそれに促されて、哲学するということを学んできたように思います。 本書は、そんな言葉にならないはずの驚きを、これまで主に西欧の哲学者たちに学んできたことをふまえながら、それでも何とか言葉にしてみようという試みです。「誰かがいるということはどういうことなんだろう?」。それに加え、現代社会において自我への関心が肥大化し他者への関心が薄れているのではないかと危惧する私には、見知らぬ他者(遠い隣人)への関心と配慮の可能性を探りたいという思いもありました。 私の専門は善悪や正不正を問題にする倫理学ですが、他者への気遣いがなければそんな話も空虚になりかねないと考えたからです。特に、若い学生の意見を聞く機会に恵まれている教員として、若者の間での「なぜ人を殺してはいけないのか」という問いかけや「社会」に対する否定的イメージを感じているだけに、それに自分としてはどんなふうに応えられるのかと考えてきました。 まだ問題の提示にとどまっている面も多分にありますが、こんな問題に多少なりとも興味をもつ方に一読していただき、ご意見をいただければ幸いです。

一般教育助教授 藤谷 秀




訪ねてみませんか?

山梨県立文学館





 山梨県立文学館は飯田蛇笏、山本周五郎、深沢七郎など山梨出身の作家の作品や、芥川龍之介、太宰治、樋口一葉など山梨ゆかりの作家の作品等貴重な資料を数多く収集・保存しております。これらの資料は、常設展、企画展で順次紹介しています。
 また、閲覧室は入室が自由で文学館所蔵の図書や雑誌などを手にとってご覧になることができます。


サービス案内
 芥川龍之介の草稿・ノート類や、樋口一葉の「たけくらべ」草稿などの特殊資料が画像でみることができます。


 希望する資料をコンピュータシステムで所蔵検索ができ、図書や雑誌などを閲覧することができます。係員が調査・研究の相談に応じてくれます。


 「銀河鉄道の夜」「走れメロス」などの文学作品を朗読テープで聴くことができ、山梨出身及びゆかりの作家を紹介したビデオも鑑賞できます。



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展示室 9:30 〜 17:00 (ただし、入室は 16:30 まで)

閲覧室 9:30 〜 19:00 (ただし、土・日・祝は 18:00 まで)

休館日 
 ・ 月曜日(祝日の場合はその翌日)
 ・ 祝日の翌日(日曜日の場合を除く)
 ・ 年末年始(12月 21日から翌年 1月 1日)
     ただし、1月 2日・3日、4月 30日〜5月 5日は開館
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平成14年度からホームページが開設される予定です。

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平成13年 4月〜平成14年 2月までの貸出冊数・時間別貸出人数です。


編集後記

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最終更新日 05/5/2
制作 山梨県立大学(文責:図書館)
Yamanashi Prefectural University