ふじざくら No.18

山梨県立女子短期大学図書館(2001.4)




「ビタミンF」を知っていますか?



  
図書館長・国際教養科教授 島袋善弘


 今年の1月、「ビタミンF」のことが話題になりましたが、知っていますか。「ビタミンF」は、わたしたちの心の活力に関わる大切なものですが、今まで全くとりあげられたことがありません。
 「ビタミンF」は、今年の直木賞(日本で一番知られている文学賞。対象は新人作家。エンタ−テイメント小説に与えられる。同時発表の芥川賞は純文学に与えられる)受賞作です。いじめにあっている中学生の娘を心配する父と母のこと、日常的に切れかかっている少年にどう対応すべきかに思い悩む中年の男たちのこと、10年前に別の男のところに走った母親が帰って来ることをめぐる40歳前後の息子・娘の心と父親の対応などが、描かれています。いずれも現在の家族(FAMILY)をめぐる問題が、おだやかに暖かく語られています(「ビタミンF」のFは、フアミリ−のFです)。
 家庭・家族にレンズを据えて、そこから現代を発見しようという短篇小説ですが、家庭・家族に圧縮された社会を描いているともいえる物語です。
 これからの学生生活は、周りにあるものに凝縮された、わたしたちの生きている「現在」を考える期間です。もちろん家族だけではありません。社会・歴史・哲学・自然・ことば・身体・情報・教育などいろいろな現在の問題を考え、学びます。
 現在を知る上でテレビや新聞では充足されない部分が残されることになる。それを埋め合わせるものはいくつかある。たとえば、いろいろな人の話を聞くことや、色々な文献を読むことである。現在問題になっていること(たとえば家族関係の現状、子供が置かれている状況、日の丸・君が代問題など)については、論壇誌(『世界』『中央公論』など)を読み、それに関する新しい単行本を読むことになる。それによってわたしたちが生きている時代がどのような問題を抱えているかを多面的に、ある程度の深さをもって知ることができる(さらに言えば、大学で学ぶことは時代を作る人・物・心に関わる出来事の背景や相互関連を追求する知識・技術を獲得することである)。
 図書館は、そのような学生生活に図書・雑誌という材料(これを「ビタミンL」と呼びます。LIBRARYのLです)を提供します。「ビタミンL」でいろいろな知識を獲得し、感性をみがいて下さい。「ビタミンL」は活用を待っています。







『世界大百科事典』(平凡社)によると……

ビタミン(vitamin)は、体内では合成することができず、またそれ自体は生体の主要構成分やエネルギ−源とはならないが、微量で生理機能を調節して、代謝を円滑にさせる物質群… …をいう。ビタミンには、A・B1 2・B6・B12・C・D・E・Kなどがある。何故だか「ビタミンF」「ビタミンL」は、まだ載っていない。




山梨県立女子短期大学図書館にクリック!!


http://www.yamanashi-ken.ac.jp/~lib/libindex.htm



図書館ホームページから本学図書館利用案内や開館情報、国内外のさまざまな情報にアクセスできるほか、本学や他大学図書館などで所蔵している資料の蔵書検索ができます。館内に設置のパソコンまたはお手持ちのノートパソコンから自由にアクセスできます。



当館ホームページに『OPAC自動横断検索システム』が登場!


OPAC自動横断検索システムとは?


県内大学図書館(山梨大、山梨医科大、都留文科大、山梨学院大、身延山大、当館)、県内公共図書館、信州大、国立国会図書館、国立情報学研究所の図書・雑誌、約300万冊以上の目録情報が検索できるシステムです。

資料をお探しのとき、ぜひ活用してください!




必要な資料が本学図書館に所蔵していない場合は、次のようなサービスを行っています。

相互貸借 文献複写
求める資料を大学図書館、専門図書館、研究機関等から借りることができます。大学図書館は、教育や研究のために収集した専門書及び学術雑誌、研究紀要、研究報告書を所蔵しています。 求める資料のコピーを大学図書館、専門図書館、研究機関から送付してもらうことができます。コピー料金、郵便料などは、利用者の負担となります。


お気軽にご相談ください!




本学図書館内ではお手持ちのノートパソコンを使ってインターネットが利用できます

<LANにつなぐために用意して頂くもの>

*ノートパソコン

*10 baseT(もしくは10/100 baseTX)対応LANカード

*10 baseTケーブル






メールレファレンスサービス


山梨県立女子短期大学図書館では、みなさんの研究・学習等をサポートするため電子メールによる調査・相談を24時間受け付けています。
必要としている資料の所在や探し方など、わからないことがありましたらご相談ください。



山梨大学・山梨医科大学附属図書館は一般への図書の貸出サービスを始めました!!


来館の際には、運転免許証・保険証などの身分が証明できるものが必要です。
臨時休館などありますので、事前に問い合わせをして利用しましょう。





図書館ツアー(インターネットを使った文献検索)についての報告


学生の皆さんが必要な資料や情報をいつでも自由に入手できることを知り、ものの調べ方や探し方を習得し、身近に図書館がある便利さを実感できることを目的とし6月と11月の期間を利用して試験的に図書館ツアー(インターネットを使った文献検索)を実施しました。

その結果、皆さんからの文献複写・相互貸借・レファレンスサービス等の依頼や機器に関する操作方法等に関する質問が増加しました。さらに充実した図書館ツアーを実施するため、ツアー後ツアーの内容等についてアンケート調査を行いましたので主な結果を報告します。

参加人数247人 アンケート回答者160人

1

2

6

103

78

181

11

64

2

66

167

80

247



「図書館ツアー(インターネットを使った文献検索)」のような研修は必要ですか。



実施時間はどうでしたか。



実施時期はいつが良いと思いますか。

1年生の回答

一年次

4月

5月

6月

7月

9月

10月

11月

1月

人数

32

39

26

3

1

1

7

1


二年次

4月

5月

6月

7月

9月

人数

10

6

10

1

1


2年生の回答

一年次

4月

5月

6月

7月

9月

人数

18

5

6

0

2


二年次

4月

5月

6月

7月

9月

人数

13

9

3

0

1



ツアー実施前にインターネットを使い文献検索をしたことがありますか。


ツアー実施後図書館を利用する機会が増えましたか。


図書館は、利用者の情報面での自立を支援し、知る権利を保障する義務があると思います。
そのためには、利用者の方々の御意見や要望、アンケート結果の分析等を行ないながらより一層のサービスの向上を図っていきたいと考えています。




本の散歩道



本と経験と想像力


生活科学科講師 箕浦一哉

 本が頭上から降ってきた話から始めようと思う。あの阪神・淡路大震災のときのことである。
 私は前年の4月に兵庫県西宮市に転居したばかりであった。その前夜は夜更かしをしたため,それは眠りについてからまだ2時間たらずのことであった。地鳴りに目を覚ますと,すぐに強い揺れに襲われ,私はなすすべなく毛布をかぶるだけであった。書棚に頭を向けて寝ていたので,文庫本などの軽い本が次々と頭上に落ちてきた。
 幸い,書棚そのものは,そばに置いてあった段ボールに止められて倒れてこなかった。住んでいた古アパートもどうにか持ちこたえ,結果的には私はほとんど被害を受けなかったことになる。一歩まちがえば命もなかったかもしれないのに,自分はこうしてけがひとつせず,財産もほとんど失うことがなかった。それを良かったと喜ぶよりも何か後ろめたい気持ちがしばらく心の中を占めていた。
 少し後,子供の頃からずっと神戸に住む友人と話す機会があった。彼は,自分の好きな神戸の町が変わり果てたのを見るのがつらい,と言った。私はまだ転居して間もなかったのでそのような気持ちにはならなかったが,それまで住んだ名古屋や京都で同じことが起こったとすれば,と考えたとき,彼の気持ちが少しわかった。
 震災を経験したことで,世の中の見え方が少し変化したような気がした。たとえば,他の災害や紛争などに対しても,リアリティーが感じられるようになった。理不尽な力で住む所や財産や家族や友人を奪われることがどれだけ辛く腹立たしいことか。当事者の経験そのものには及ばなくとも,想像力によってその経験に近づくことができる。以前は,テレビのニュースなどを見て何となくわかったような気になってしまい,想像を働かせることを怠っていたことに気づかされた。情報があふれている世の中で,あえて想像を働かせてみることの大切さを震災の経験を通して学んだように思う。本の読み方も多少は深まったように感じている。もっとも,それまでいかに鈍感であったか,というだけの話かもしれないのだが。




本学先生の研究書紹介


『Women and Families in Rural Japan』
Edited by Masae Tsustumi
Tsukuba-Shobo 2000.1 刊行


 ここ数年来、日本の家族・地域社会の変化について、世界学会をはじめ海外で報告をする機会が何度かあった。昨年の夏には、日本からは最も遠い国、ブラジルのリオデネジャイロでの世界学会に参加をして、報告をしてきた。このような時、現在の日本の現状、課題、問題などをまとめたものが求められていることを痛感した。そこで、海外報告をした経験のある同じ領域の研究者が「家族と女性について」 何か日本から海外へ発信しようということで出来たのが本書である。幸い文部省の学術出版助成金が得られ、順調に海外へ向けての出版となった。現代日本農村社会や家族、女性の生き方の中に日本の古い伝統的な文化が存在すると同時に、近代的な生活様式があり、多様な実態がある。それらをジェンダーの視点で見たときどのように描けるか。また、持続と変容の軸でみるとどのような特色があるかをまとめた。 英語が苦手な方も、時々出てくる横文字の日本の言葉に触れると、何を言っているのかなんとなく判るのではないだろうか。昔懐かしい日本の風景の表紙である。一度手にとってご覧いただければと願う。
 生活科学科教授 堤 マサエ


『ジェンダー発達心理学』
伊藤裕子 編著
ミネルヴァ書房 平成12年刊行


 長年の友人である編者に誘われて、「異性関係とセクシュアリティ」「夫婦関係とジェンダー・ギャップ」の2章を執筆しました。女性は「恋人」と「恋人未満」の異性をはっきり区別するのに、男性はその境界があいまい。 夫婦関係の満足度は、夫より妻のほうが低い−こういう男女の「違い」(あくまで平均的にみた場合ですが)は、生物学的な違いというより、文化や社会のありかたによって作り出されたものです。これが「ジェンダー」です。 この本を読むと、「ジェンダー」が私たちの自己形成のどんな点にどう影響するのか、理解していただけると思います。「心と行動の科学T」は本書をテキストとします。いっしょに「ジェンダー」問題を考えてみませんか?
 幼児教育科教授 池田政子





平成12年 4月〜平成13年 2月までの貸出冊数・時間別貸出人数です



編 集 後 記


春風にのせて「ふじざくら No.18」をお届けします。
新たな季節、図書館で素敵な発見!出会いがありますように〜!
図書館職員一同、みなさまのお越しをお待ちしています。どうぞよろしく!




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最終更新日 05/5/2
制作 山梨県立大学(文責:図書館)
Yamanashi Prefectural University