第5章 導波管


(revised on 99/12/10


1.方形導波管内の波動方程式

    マックスウェルの方程式の直角座標成分表示は,第3章においてすでに与えておきました.それによれば,

       (eq. -1

       eq. -2

    でありました.

    こんどは,波動の伝播軸をz軸と定めましょう.こう定めますと得られる電磁界はすべからくとしてよいことになります.

    また,

    z=0,またはHz=0   (eq. -3)

    を仮定してみます.これは経験からの判断です.

    1 方形導波管

 1.1 E=0の場合

         (eq. -4

      この第1式を第4式に代入して,

         (eq. -5)

      また,第3式を第2式に代入して,

         (eq. -6)

      となります.これらを第5式に代入しますと,

         (eq. -7)

      となります.

      こうして得られたモードをTEモードと言います.

1.2 Hz=0の場合 

    同様にHz=0としたモードについても波動方程式を求めることができます.そしてそれをTMモードと言います.マックスウェルの方程式より,

       (eq. -8)

    を得ますが,まず,第4式を第1式に代入して,

       (eq. -9)

    が得られます.また,第2式を第3式に代入して,

       (eq. -10)

    となります.よって得られた二つの式を第6式に代入して,次式が求まります.

       (eq. -11)

    これがTMモードの波動方程式です.

2.方形導波管内の電磁界

 TEモード

      まず,TEモードの電磁界を式(7)から求めていきましょう.5.1(7)の一般解は,既に見てきたように,次のように表わされます.

         (eq. -1)

      よって,

      (eq. -2)

      を得ます.ここに,上式を式(1-7)に代入しますと,

         (eq. -3)

      なる関係が得られます.式(2-2)を式(1-5)(1-6)に代入しますと,

         (eq. -4)

         (eq. -5)

      などを得ます.

      ところでここで境界条件について考えましょう.導波管の壁は,x=0,a,およびy=0,bにあります.この壁面上において,それぞれExやEyが消失します.詳しく書くと次のようになります.

         (eq. -6)

      よって,

         (eq. -7)

      をえます.これらより,ξやηは,

         (eq. -8)

      となります.

      以上をまとめますと,導波管内のTE波の電磁界は次のように表わされます.

         (eq. -9)

      これらの各式でm=0としますと全電磁界が消失します.それゆえmとしては0を除く全自然数が対応することが分ります.nについてはそのようなことはありませんから,nは0を含む全自然数が対応します.それゆえ,方形導波管内の電磁界は一般的に次式のように表わされることになります.

      (2)より,

         (eq. -10)

      なる関係を得ます.

      ゆえに,

         (eq. -11)

 TMモード

    省略

     

     

     

 3 方形導波管の伝送特性

    ζは導波管内の波動の軸方向への伝播定数です.k0は,

    であって,波動の周波数に関わります.したがって,上式は波の伝播定数と周波数の関係を記述した式であるということができます.このように,伝播定数と周波数の関係を表わす式を分散式(dispersin relation),あるいは特性方程式(characteristic equation)などということがあります.そして,横軸にζを,縦軸にωをとって図に表わすとき,その描かれた図のことを分散曲線(dispersion curve)といいます.TEモードの分散式は,

       (eq. -1)

    でした.これに従って方形TEモード導波管の分散特性を見てみましょう.

    2 方形導波管の分散特性

    上図では,b=a/2となるように選んでありますが,これは実際の方形導波管の規格が全てこのようになっていることを考慮に入れているためです.

    上の図で,ζ=0となる点のことを遮断と言います.遮断となる周波数を遮断周波数と言います.遮断周波数より低い周波数は伝搬できません.式(1)から遮断周波数fcを求めますと,

       (eq. -2)

    となります.この図から分かるように,伝搬する電磁波にとって導波管はfcを最低周波数とするハイパスフィルターの特性を有していることが分かります.また上図のように,方形TEモード導波管では,最も低い周波数を伝送できるモードとしては(1,0)モードであること,以下(2,0)(1,2)(2,1)モードなどの順になっています.

    なお,式(2)に対応する波長のことを遮断周波数と言います.それをλcと書きますと,

    (eq. -3)

    となります.これより,遮断波長はモード数が高いほど短くなることが分かります.

    上図から分かるこように,モード数が高くなりますと,一般に分散曲線の曲がりが大きくなります.このことは,高次モードは周波数によって位相速度や群速度が変化することを意味しています.また,全体としてみても導波管はモード毎に分散が異なることが分かります.ということは,あまり広帯域の通信をするとモード分散が生ずることを意味します.

 4 円形導波管

    半径aの中空円形導体を円形導波管と言います.円形導波管も方形導波管同様一定周波数以上の電磁波を損失少なく伝送することが出来ます.ここでは,円形導波管内の電磁波の伝播特性について調べてみましょう.

    eq. -1 円形導波管

     

    例によってマックスウェルの方程式を円筒座標で表現しましょう.

    ρ成分

    φ成分

    z成分

    ここでEz=0としてみましょう.これはTEモードです.まずTEモードについて電磁界を見て行くことにしましょう.前節と同様にして伝送波のを仮定して,

    ρ成分

       (eq. -2)

    φ成分

       (eq. -3)

    z成分

       (eq. -4)

    (1b)(2a)からHφ を消去しますと,

       (eq. -5)

    となります.また,式(1a)(2b)とからH を消去しますと,

       (eq. -6)

    となります.以上の2つの関係を式(3a)に代入して,

       (eq. -7)

    なる方程式を得ます.

    ここで,φに関して

    と置きますと,R(ρ)について,

       (eq. -8)

    なる方程式が得られます.これは,既によく知られている標準的なベッセルの微分方程式ですから,一般解は容易に求められて,形式的に,

       (eq. -9)

    となります.よって,Hzとしては,

       (eq. -10)

    のようになります.

    そこで式(8)を式(5)に代入してみましょう.

       (eq. -11)

    これは一般解です.これを見ると,中括弧の中のNeumann関数は変数ρが0となると,次数の如何に関わらずに無限大になってしまいます.それゆえ,B=0とならなければなりません.

    ここで境界条件を導入します.Eφの完璧ρ=aに於ける値はこれが接線成分ですから,0になります.ゆえに,

       (eq. -12)

    なる方程式が得られます.この方程式も超越方程式ですから解は解析的に求めることは困難です.しかし,この方程式の根はよく求められていて数表としてまとめられています.そこで,一般的にJn()=0なる方程式の解として形式的にz=jnmと表わすことに致します.こうしますと式(10)の解は形式的に次のように表わすことが出来ます.

       (eq. -13)

    ここに代表的な低次のjnmについてその数表を掲載しておきます.

    1nmの数表 

    (11)より,固有値ζを求めますと,

    (eq. -14)

    となります.この式をもとにして描いた分散曲線が下の図です.図からも分かるように,円形導波管では最低次のモードは,TE11モードです.以下,順にTE21,TE01,TE31,TE12……のようになっています.

    3 円形導波管の分散特性

    電磁界の各成分は次のようになります.

    eq. -15

5 空胴共振器

再度方形導波管に戻りましょう.そこではTEモードについて,各電磁界は次のように表わされました.

   (eq. -1)

 

4 空洞共振器

いま,図のようにz=−cとz=0の間に完全導体の壁を構築してみましょう.すると電界は次のように表わされます.

   (eq. -2)

これらは,z=0,およびz=−cにおいて消失します.よって,

   (eq. -3)

となります.A,Bの全てが0とならないためには,

(eq. -4)

とならなければなりません.よって,

   (eq. -5)

となります.ゆえに,

   (eq. -6)

となることが求められます.ここにs=0を除いたのは,s=0では全ての電磁界が0になってしまうからに他なりません.

5.1節の式(15)によれば,

なる関係がありましたから,式(1)をこれに代入しますと,

のような関係が求められます.これより,共振周波数は,

   (eq. -7)

のように表わされます.

ここで,m,n,sの三つの整数の組み合わせができます.そして,共振器内部でのモードがTEモードであれば,この組合せを下添字として付して,TEmnsを与えられた共振器の共振モードといいます.