No.27 夕立
うだるような暑さの昼下がり。一転にわかにかき曇ったと思ったらバケツをひっくり返したような夕立。それも束の間、あっという間に通り過ぎていった。熊さんと八っ つぁんの立ち話。
熊: いい夕立だったねぇ。
八: まったくだよ。夏に夕立はいいねぇ。見てみねぇ、芝生でも笹でも生きけぇったように青々しているぜ。
熊: 全くだ。夕立は、暑い夏にゃ最高のご馳走よ。そりゃそうと、いま雷のでっけぇ音の後に大家さんちの物置のあたりで何か落っこちたような音がしなかったかい?
八: うん、そう言やぁ、そんな音がしたような気がするねぇ。行ってみてみようじゃねぇか。
二人が裏にまわってみると、びっこをひいた龍が一匹;
熊: おや、おめぇ龍(タツ)じゃねぇかい?
龍: えぇ、そうです。今、夕立を降らしてる時に、雲の隙間に足を取られて、落っこちてしまいまして・・。
八: そうかい?するってぇと、今、涼しい夕立を降らせてくれたのはお前さんてわけかい?そりゃ、ありがとうよ。
熊: それで、おめえどうすりゃ空に帰れるんでぇ?
龍: いま、雲を呼びにやりましたから、間も無くここへ迎えに来るんですがね。しかし、お前さん達、その前に私を動物園に・・・なんて言わないでしょうねぇ?
八: 言わねぇよ。そのかわり、夏中、ちょくちょく夕立を寄こしねぇ。
龍: そりゃぁありがたい。お礼に、夕立以外にも何か上げたいんですがねぇ。
熊: お前さん、夕立以外にゃ呉れるもんて無いんじゃないの?
龍: いえ、冬になって寒くなったら、私の息子の「子龍(コタツ=炬燵)」を遣しますので。