No.26 おかわり

大店の主人と小僧の会話:

主人: おい、豆がよく煮えたかどうか鍋の蓋を取って見てご覧。

小僧: だんな湯気がたって見えませんでぇ。

主人: それなら皿にとって見てみろ。

小僧: えぇ、おいしく煮えています。

主人: おいしいって、誰が食べてみろと言ったよぉ?ちょっといい顔をするとすぐそれだ。行儀を悪くしてはいけませんよ!お隣の中村さんちに行って、お豆が煮えましたから、お茶を飲みにおいでくださいって言っておいで。

(小僧、ふくれっ面をしながら外出)

主人: しめしめ、あいつは行っちまったな。この隙に、俺もちょっと毒見をしてみるか。うん! こりゃぁうまい! なかなか良くできてるぞ。茶碗にもっとよそって食べようかな。だが、小僧のやつが帰ってきて見つかると小言を言った手前教育上良くないからな、隠れて食べよう。どこか隠れるところが無いかいなぁっと。二階? 二階ってのもおかしいな。戸棚の中? それもおかしいな。そうだかわやだ。厠なら誰も来ないからゆっくり食べられるぞ。

(そこへ小僧が戻ってくる)

小僧: だんな!ただいま。中村さんちに行ってきました。・・・??だんな! だんな! ?だんなはどこへ行ったのかな。居ないぞ。しめしめ、鬼の留守に豆を腹いっぱい食ってやろう。茶碗によそってっと。だんなに見つかるとまた叱られるから、隠れて食べよう。どこか隠れるところは無いかいなぁっと。二階? だんなに呼ばれて「へぃ、二階に居ました」ってのも変だな。戸棚の中?。それもおかしいな。そうだかわやだ。厠なら誰も来ないからゆっくり食べられるぞ。

(小僧がそっと、便所の戸を開けると、中で主人が茶碗によそった豆を食っている。主人、あわてて・・)

主人: なんだ、お前は!!?

小僧: へいっ、お豆のお代わりを持って参りました!!

主人: 「(^_^;)」