No.28 耳垢取り

 今ではとおに無くなってしまったが、江戸時代には「耳垢取り」という商売があったという。

耳垢取り: 「みみあかとりー!、耳の垢を取りましょう!」、「みみあかとりー!、耳の掃除を致しましょう!」

お客  : 「おーい、耳垢屋さん、耳垢取りの代金はいくらだい?」

耳垢取り: 「へい、松竹梅の三種類ありますがね。お客さんはどれになさいますね?」

お客  : 「えっ? 松竹梅だって? ちなみに松ってどんなことをして呉れるんだい?」

耳垢取り: 「松ですてぇと、金の耳垢取りで取りますんで、取った後いつまでも小判の音が聞こえますんでな、金持ちになった気分が味わえますんで。」

お客  : 「そりゃいいねぇ。で、竹というのは?」

耳垢取り: 「竹はなんですよ、象牙の耳垢とりで取りますんでな、すべすべしてとても気持ちがいいんですよ。」

お客  : 「それで、何かご利益はあるのかね?」

耳垢取り: 「へぃ、象牙ですからな、足音が良く聞こえるようになるって評判で。ある人は、おかげで寝ているときに泥棒の足音にすぐ目が覚めるようになったといいますな。」

お客  : 「じゃ、一番安い梅は?」

耳垢取り: 「さびた釘の背中で彫りますんで。」

お客  : 「痛いんじゃないの?」

耳垢取り: 「痛いだけじゃありません。耳垢はなくなりますが耳が聞こえなくなります。」