No.30 「蛇」の起源

 町内では最も物識りで名高い大家の半兵衛さんのところへ、これまた町内で最もモノを知らない与太郎がやってきた。

与太: 今ここへ来るところで蛇を見たんでやすがね、大家さん、どうしてあれをヘビって言うんですかい?
大家: おお与太さん、そりゃいいことを聞いてくれるねぇ。ヘビってのはね、『なんだい、この虫は?頭からいきなり尻尾が出ていて、体中シッポだらけじゃねぇか。こんな虫は「へ」のようなもんだってんでね、最初の頃はあれを「へ」って呼んでいたんだよ。
与太: でも、いまじゃヘビのことを「へ」なんて言いませんで?
大家: そうよ、「へ」のようなものにシッポが出ているからよ。「へ」の尻尾てんで「へ〜尾」って言っていたのが詰まって「へび」になったって訳よ。
与太: なるほどねぇ!! 「へ」の尻尾で「へ尾」ですかい。それで、ヘビがもっと大きくなるとどうなるんです?
大家: ヘビがもっと大きくなるてえと、「ウワバミ」になるんよ。
与太: 成る程ねぇ! それでどうして「ウワバミ」のことを「ウワバミ」って言うんですかい。
大家: おめえ、なぜ「ウワバミ」を「うわばみ」って呼ぶか知らねぇのかい? 山に行ってウワバミにいきなり出っくわすってぇと、そのあんまり恐ろしいんで「ウワッ〜」と驚くだろう。だから「ウワバミ」だぁね。
与太: それじゃ、ウワバミじゃなくて「ウワッ」じゃねぇですかい?
大家: 「ウワッ〜」と口を開けりゃ、その後で口を閉じるときに「バミッ」て音がするだろう。だから「ウワバミッ」ってんだよ。
与太: 成る程ねぇ。大家さんは何でも知ってるんですねぇ!!
大家: そうよぉ、俺なんだぁ、あれを知ってこれを知らねぇなんてことは無いんだ。何時だって勉強しているんだから。
与太: それじゃ序に聞きますがね、ウワバミは年を取ると何になるんです?
大家: 決まってるじゃねぇか!ウワバミは三年たつとワニになるのよ。だから、「三っつ年上のワニ(兄)さん」って言うだろう?
与太: ???