芭蕉db

ルビ「ばり」について


蚤虱馬の尿する枕もと

(のみしらみうまのばりするまくらもと)

  の「ばり」については、現在では広く「しと」と読まれているようである。芭蕉は、もとよりルビを付していないので真偽は分からないが、ここではあえて「ばり」とルビをふった。 ただし、『奥の細道』の諸本で最も正当といわれている『曾良本(天理本)』では「ばり」とルビを振っているので、 だれが振ったのかは不明だがこれが正しいと思われる。また、これは、この地方の方言として小便を「ばり」と呼んでいたことによるものと思われる。

ところで、芭蕉は、この後、尾花沢の鈴木清風宅で詠んだ句、

涼しさをわが宿にしてねまるなり

でも「ねまる」という羽前の方言を使っている。芭蕉一行が、みちのくの風俗に適応していった様子を窺い知ることができるのではないか。その意味で、ここでは確信を持って??「ばり」と読みたい。

ところで、上記の説に関して、当地の友人(山形大学佐々木正彦先生)から次のようなメールと写真を頂いたので紹介しておく。


 現在の尿前の関跡で休み屋を営んでいる土地所有者の方々(粒あんがたっぷり載せてあって6200円と、安くてとてもおいしい「草だんご」を商っている)から、「ばり」についての面白いお話を伺いましたのでお便りいたします。

 当地(鳴子)では、60歳前後の方々ですが、その方々が小さいとき、「馬のいばり」などという表現は日常的に使っていたそうです。(人に対しては、当時から使わなかったそうです。)

また、「。。。馬の尿する。。。」の俳句では、地元では、一貫して「ばり」としか読まなかったそうです。彼らは「ばり」の発音でこの句を小さいときから慣れ親しんできたとのことでした。関所の呼び名については、昔から「しとまえのせき」だったそうです。

「休み屋」


 尿前の関へ戻る