芭蕉宛杉風書簡2

(元禄7年6月28日)

戻る


一、素龍事取持成かね申候。存候とは様子相違御座候。乍去、是も八桑丈了簡おとなしく被申候間、大方調可申候。委桃隣先日ニ郎兵へに申遣候様に被申候。

一、初秋の句、ふるめき候へ共存付候。

なにをそのそれとはいはん今朝の秋

ケ様に申捨候。万一、七夕いたし候はゞ、跡より可申上候。盆前發句も出申間敷と存事候。

一、深川庵仕舞、寄申候。左様に御心得可遊候。以上

       六月廿八日               杉風

芭蕉翁様

 

追而申上候。利牛申候は此集嵐雪付紙仕、廿所程指合御座候とて、人に見せ申候由承候。指合は子珊との兩吟、水邊一句ちかく候所斗にて御座候。

一、鹿笛聞たる躰、生類にいたし、馬打こし候と申由。

一、駕に殻(穀)物の物と云字、打こし候と申由。

一、綿弓に、鍬の先かけにやる、道具打こし候と申由。皆ケ様成事申由承候。おかしく存候。

一、此集ほのかに嵐雪聞付、隙の時、露拂と申集仕、先へ出し申由にて、夏の發句五十句、俳諧百韵にて急にもみ立候處に、氷花女房、産にて相果、延引に罷成、此方先へ出し申候へば、嵐雪方はやめ申候。此段露拂仕候由、野坡咄に承候。為御心得申進候。火中火中。


江戸から膳所滞在中の芭蕉に宛てた杉風書簡。素龍の不評の報告。追伸で嵐雪とのいざこざの報告が見える。受信したのは京都去来亭であったはずである。