芭蕉db

蝶の羽のいくたび越ゆる塀の屋根

(芭蕉句選拾遺)

(ちょうのはの いくたびこゆる へいのやね)

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 元禄3年春、伊賀の門人乍木<さぼく>亭で詠んだとされる。乍木亭の塀か隣家の塀か。比較的高い塀が南側にあったかもしれない。

蝶の羽のいくたび越ゆる塀の屋根

 春の日なが、先ほどから見ていると蝶が何度も何度も塀を越えて行ったり来たりしている。おそらく同じ一匹の蝶なのであろう。それをじっと観察している作者の周りでは春の日ののんびりした時間がゆっくりと経過している。蝶といわずに蝶の羽と言っているところから、塀と蝶と作者の距離もおのずと想像がつく。ほっとする名句。