芭蕉db

 この句はある門人に遺されけるなり

忘るなよ薮の中なる梅の花

(初蝉)

(わするなよ やぶのなかなる うめのはな)

   一年都の空に旅寝せしころ、
   道にて行脚の僧に知る人にな
   り侍るに、この春みちのおく
   見に行くとて、わが草庵を訪
   ひければ

またも訪へ薮の中なる梅の花

(あつめ句)

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 貞亨4年春。奥州に旅するという僧侶=門人に贈った餞別吟。

忘るなよ薮の中なる梅の花

 あなたはいま奥州みちのくの旅に出発しますが、きっとまたこの草庵を訪ねてくださいね。
 『新古今集』式子内親王の歌「
ながめつるけふは昔になりぬとも軒端の梅よ我を忘るな」、また、実朝の歌「いでていなば主なき宿となりぬとも軒端の梅よ春を忘るな」にヒントがあったと思われる。