徒然草

序段 つれづれなるまゝに 、


 つれづれなるまゝに*、日くらし*、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を*、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ*

つれづれなるまゝに:退屈なこと、さみしいこと、無聊。
日くらし<ひぐらし>と読む。朝から晩まで。終日。 ひねもす。
心に移りゆくよしなし事を:脳裏に去来するさまざま雑多なこと、どうということも無いようなこと、瑣末なこと。
そこはかとなく書きつくれば:とりとめもなく書いてみると。 「そこはかとなし」とは、はっきりしない様をいう。
あやしうこそものぐるほしけれ:怪しげなものになってしまった、妙にきちがいじみたものになった。古来、現代語訳の定まらない個所。 原文のままで感じ取ってしまうのがよい。 作者兼好法師の謙遜や羞恥、世間への配慮といったものもこめられている表現

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     有名な書き出しである。作者は、無聊の慰めに書いたと言い、三大随筆とも言われているが、単なる思い付きで書いた「随筆」ではなく、実際には非常に綿密な計画とコンセプトを持って書かれた中世の一日本人知性による魂の記録である。よって、読者にとって「あやしうこそものぐるほしけれ」というようなものではない。本書が、時代を越えて読み継がれてきたのも、これが人生の書となっているからであろう。
     

     

     

     つれづれなるままに、ひくらし、すずりにむかいて、こころにうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなくかきつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ