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情報とは「不確実な事態に対処するために必要となる要素」であり,情報を取り込むこと(
私たちがコミュニケーションをするときには,情報内容を相手に「意味あり」と認めてもらえるように情報をコード化しテキストを生成し,これを伝送経路を通じて相手に伝えます.この場合送信者は,彼が所持しているコードに付随している「辞書」と「文法」を参照しながら作業を進めます.発信者が「普遍的な」辞書と文法に則って「正しく」コード化されたテキストを発信し,伝達の中途に伝達を邪魔する雑音がなく,受信者が「正しく」テキストを受信した上で,同じく「普遍的な」辞書と文法の規定にしたがってテキストを解釈してくれたら「理想的な」コミュニケーションが成立します.
コンピュータを使って行う情報伝達はその意味で「理想的な」コミュニケーションの仕組を作り上げています.まずコードは,(日本語ではJIS・SJISやEUCなど,英語ではASCIIなどというように)言語の多種性その他のためにいくつもの種類があるのは困りものですが,それでも規格化されていてそれに従う限りきちっと体系化されていますし,伝送にあたっても(現在ではTCP/IPなどのようなデファクトスタンダードな)通信プロトコルが定義されていて,そのプロトコルに従う限り情報は確実に伝達されます.仮りに経路の途中に雑音があってテキストが正確に送られないような場合でも,誤り訂正の仕組が通信プロトコルの中に組み込まれていて余程劣悪な環境でない限りコミュニケーションが不能になることは今では考えられません.そのことは,みなさんがインターネットで地球上の津々浦々の人々と情報をやり取りできることですでに体験済みのはずです.ところが,人間が介在するとコトはこのように「理想的に」はいきません.その結果深刻なディスコミュニケーションを招来してしまいます.
ディスコミュニケーションの要因はそれこそ無数にありますが,中でも顕著なものとして上述のコード体系の「普遍性」の欠如を上げることができます.特に近年の学生諸君のコード体系の未成熟は目を覆うばかりです.そもそも大学に入ってくるには,入試という難関をくぐってきますが,あれはコミュニケーション論から言えば,入学後に大学の学習に必要な過不足無いコード体系を用意しているか否かを確認するためのものに他なりません.そして偏差値の高低は一応措くとして,あんな難解な入試センターテストで程々の戦果をあげている筈の本学の学生達はほぼ十分な「辞書」と「文法」が備わっているはずです.しかし,実態は惨澹たるものです.
そもそも世界文学と呼ばれるような普遍的文学は大別して,シェイクスピア・セルバンテス・ゲーテ・ドストエフスキーのように作品の中で実に特異な人間類型(ハムレット・ドン
理科の学生に文学は関係が無いといえばそれまでですが,より良いコミュニケーションを求めようとするなら,自らの辞書と文法を限りなく豊かにしておかなくてはなりません.世はあげて情報化・国際化と言われています.情報化も国際化もつまるところその中に生きる人々のコードとテキスト統辞体系のことに他なりません.コードを豊かにする最良の方法は読書にしくはありません.時あたかも秋の夜長,在学中に「岩波文庫」を最低