山梨大学工学部をめざすあなたへ
アイザック・ニュートンと言えば,あの力学の三つの法則と万有引力の発見者であり,そして微分概念の創造者としても永遠にその名を歴史に刻んだ偉人です.実に近代科学は,17世紀彼によって始まりました.
ニュートンにとって,「科学をする」ということは神の創造のからくり,つまり神の摂理を読み解くことと同義でありました.神は,この宇宙をある設計図にもとづいて作り出したのですが,自然科学はその神の設計図を忠実に読み解く作業だというのです.ニュートンの開いた地平を,後に続く無数の人々が開拓し,整地し,それらを応用して,現在あなたが見る壮大な近代科学技術文明を構築しました.
しかし今,この科学技術文明は一つの壁に突き当たっています.それは文明の発達の結果として,地球の自然環境に少なからぬ過負荷を強いてしまったということです.いわゆる「環境問題」と呼ばれる重大な問題がしてしまいました.ニュートン流に言えば,これは紛れも無く神の摂理の解読に誤読があったと言わなくてはなりません.21世紀の科学は,もう一度,謙虚に神の言葉を読み解く作業を再開しなくてはならないのです.
一方,ニュートンの創始した科学とは異なり,ウィーナーやシャノンによって創始され,数学的公理の体系から生まれた全く人工的な科学があります.コンピュータに代表されるいわゆる情報科学です.インターネットに象徴されるように,いま情報科学はこの地球上に革命的な知的空間を創造しようとしています.
21
世紀の科学技術は,これら自然科学と情報科学を両輪としながら大きな飛躍を遂げることでありましょう.そこでは,神の言葉を正しく解読し,その知見を情報として津々浦々に伝えることで,この地上から永遠に偏見と戦乱と貧困を抹殺することでありましょう.山梨大学工学部は,これらの問題の全てに挑戦している国内有数の国立教育研究機関です.もし,あなたが科学技術を通じて世界のために問題解決に当たりたいのなら私たちの山梨大学工学部で一緒に勉強し,研究してみませんか.もしあなたがそれについて熱い情熱と強い意思と果敢な闘志を持っているのなら,私たちは諸手を上げてあなたを歓迎します.来年の春,桜の下でそんなあなたにお会いできるのを心から楽しみにしています.ご健闘を祈ります.
工学部長
伊 藤 洋(dean-eng@atjim.yamanashi.ac.jp)