- 芭蕉db
茅舎の感
  (延宝9年秋 38歳)
  -  老杜、茅舎破風の歌あり*。坡翁*ふたたびこの句を侘びて、屋漏の句*
作る。その世の雨を芭蕉葉に聞きて、独寝の草の戸。(ばしょうのわきして たらいにあめを  
  きくよかな)
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この夏には、門人李下が芭蕉の苗木を植えてくれた。わび住まいの柴の戸=茅舎に秋の雨が降ってここかしこから雨漏り。外の芭蕉葉にうちつける雨音と、盥に落ちる雨水の音が一層侘び住まいを引き立てる。せめての慰みは、この境涯が尊敬してやまない杜甫の境涯と似ていることだ。芭蕉初期の秀句の一つ。
 『真蹟句切』には、芭蕉野分盥に雨を聞く夜かな
とある。
 なお、この年16句が現存する。
  
  
  茨城県水戸市酒門町善重寺境内の句碑(故郷の句碑として特に牛久市森田武さん提供)
  
老杜:杜甫、茅舎破風の歌あり:<ろうと、ぼうしゃはふうのうたあり>と読む。杜牧と区別して呼ぶ時には老杜となる。杜甫の作品「茅屋秋風に破らるるの歌」の「牀牀屋漏りて乾けるところなし(どの寝床も雨漏りで寝るところもないの意)」をふまえている。
  坡翁:蘇東坡を指す。「牀牀、漏れを避く幽人の屋」なる句をもって杜甫の詩を引用したことをいう。
  屋漏の句:<おくろうのく>と読む。蘇東坡の詩に「牀牀、漏を避く幽人の屋」(『蘇東坡詩集』)とあるより引用。