芭蕉db

雲竹自画像の讃

(元禄3年7月:47歳)


 洛の桑門雲竹*、みづからの像にやあらむ、あなたの方に顔ふり向けたる法師を描きて、これに讃せよと申されければ、

   君は六十年余り、予は既に五十年に近し。共に夢中にして*

   夢の形をあらはす*。これに加ふるに、また寝言を以てす*

こちら向け我もさびしき秋の暮

(こちらむけ われもさびしき あきのくれ)

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こちら向け我もさびしき秋の暮

 僧北向<きたむき>雲竹は、このとき59歳、だから本文中の「六十年余り」は芭蕉の誤りか故意か?。誤りだとすれば、この讃を入れている場所に雲竹はいないことになる。

 雲竹は芭蕉の書の師匠といわれている。全体、気のおけない軽妙な讃。幻住庵滞在中の作。

 一句は、人生の晩秋にさしかかった親しい二人の掛け合いを感じさせて心暖まる作品になっている。