芭蕉DB

野ざらし紀行

(甲斐の国)


 甲斐の山中*に立ち寄りて、

行駒の麦に慰むやどり哉

(いくこまのむぎになぐさむやどりかな)


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表紙 年表


行駒の麦に慰むやどり哉

 甲斐の黒駒というように古来甲斐の国は馬の産地であった。野ざらしを覚悟の決死の旅も、その前年芭蕉庵焼失のため疎開していて住み慣れた甲斐の国まで帰ってくれば江戸はもう指呼の間、何となく一息ついた気分にもなろうというもの。折しも陰暦4月の麦秋の季節は、寒からず暑からず、ゆったりとした時間の流れの中で駒の足取りも軽やかに、間もなく知人の家に辿り着く。


山梨県甲州市勝沼町等々力山万福寺の句碑(牛久市森田武さん撮影)