芭蕉db
  信濃路を過ぐるに

雪散るや穂屋の薄の刈り残し

(猿蓑)

(ゆきちるや ほやのすすきの かりのこし)

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元禄3年作。48歳。

雪散るや穂屋の薄の刈り残し

 創作年の元禄3年に芭蕉は信濃路を旅してはいない。したがって詞書の「信濃路を過ぐるに」は、貞亨5年の『更科紀行』の折りの記憶かと思われるが、それも『紀行』は秋であって雪の季節ではなかった。したがってこの句は、芭蕉の心象風景としか言いようが無い。
 「穂屋」はススキの穂で作った神の御座所。信州諏訪地方に穂屋を作る風習がある。穂屋を作るために刈り取った際に刈り残したススキの原にいま雪が舞っていることであろうか。


句碑。長野市刈萱堂西光寺にて、牛久市森田武さん撮影