芭蕉db

埋火や壁には客の影法師

(続猿蓑)

(うずみびや かべにはきゃくの かげぼうし)

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 元禄5年冬。

埋火や壁には客の影法師

 埋火が赤々とおこっている。その灯りで、自分の影法師が壁に黒々と映っている。その影を客とみなして自分は冬の夜長を二人で話しながら過ごしているのだ。西行の歌「さみしさにたえたる人のまたもあれな庵並べむ冬の山里」が参考になる。
 ただし、この句には別の解があって、曲水が江戸に来たので、彼の宿所を芭蕉が訪ね、二人で埋火を囲んでしみじみと話した時の叙景句で、曲水にこれを与えたとする。それならば「影」は曲水の影ということになる。