蕉db

顔に似ぬ発句も出でよ初桜

(続猿蓑)

(かおににぬ ほっくもいでよ はつざくら)

句集へ 年表へ Who'sWhoへ


 元禄7年、秋。伊賀上野。『続猿蓑』編纂時に土芳との対話から生まれたとされる。『蕉翁全伝』には、「此の句は、此の庵に『続猿蓑』草案取り扱はれし時、句の仕方、人の情などの事、土芳云ひ出でて」とある。

顔に似ぬ発句も出でよ初桜

 伊賀蕉門の弟子ももはやみな年老いて寄る年波には勝てない。あの初桜のように若々しい句が詠まれたらよいのだが。作句時期は秋だからもとより嘱目吟ではない。ここでは作句の基本を述べたのであろう。五七の「顔に似ぬ発句も出でよ」を受けて「初桜」と急転直下言葉を決定する仕方について土芳に示すための例示的句であったらしい。
 「
名月や座に美しき顔も無し」に通ずる一句。