芭蕉db

陽炎や柴胡の糸の薄曇り

(猿蓑/芭蕉句選/安永再刻)

(かげろうや さいこのいとの うすぐもり)

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 元禄3年春。嘱目吟なら伊賀と思われる。

陽炎や柴胡の糸の薄曇り

 柴胡(さいこ)は、和名では翁草<おきなぐさ>(環境省の指定する絶滅危惧U類)という山野草のこと。根が漢方生薬(ミシマサイコまたはその変種の根を乾燥させた生薬。サポニンを含み、漢方で胸脇苦満を伴う諸疾患に用いる(『大字林』))として使われる。春に黄色い小さな花をつけ、これが実ると銀色の綿毛をつけ、それが老人の白髪を連想させるところから翁草というのであろう。一句の「柴胡の糸」というのはこれを指す。『芭蕉句選』では「柴胡の原」とする。
 


相模原市上溝の横山公園内の句碑(牛久市森田武さん撮影)