- 芭蕉db
素堂亭  十日の菊
     蓮池の主翁、また菊を愛す。昨日
     は龍山の宴をひらき、今日はその
     酒のあまりを勧めて狂吟の戯れと
     なす。なほ思ふ、明年誰か健かな
     らん事を(笈日記)
  (いざよいの いずれかけさに のこるきく)
  十六夜の月と見やはせ残る菊
  (俳諧千鳥掛)
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  -  貞亨5年9月10日。江戸、素堂亭。主人の素堂・芭蕉を含めて嵐雪・其角など総勢7人が集まった。九月九日は菊の節句=重陽の節句であるが、翌十日・十一日は宮中では「残菊の宴」を開く。この句会は、芭蕉仲間の残菊の宴だったのである。この折の、嵐雪の句は、「かくれ家やよめ菜の中に残る菊」(『あら野』)であった。
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いざよひのいづれか今朝に残る菊
 世に、「六日のあやめ、十日の菊」という。余りものの謂である。十六夜の月は、明月の翌晩であるから、重陽の節句の翌朝の菊と同列のもの。その何れがよりあわれを催すものであるか? 甲乙つけがたいものではある。
 句の構造は、「どちらが(・・・)であるか?、<十六夜の月>or<十日の菊>」である。
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