芭蕉db
   上野の花見にまかり侍りしに、人
   人幕打ちさわぎ、物の音、小歌の
   声さまざまなりける傍らの松陰を
   頼みて

四つ五器のそろはぬ花見心哉

(炭俵)

(よつごきの そろわぬはなみ ごころかな)

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 元禄7年3月2日。依水ら友人を伴って江戸上野の東叡山寛永寺での花見を挙行。「四つ五器」は托鉢僧が持参する食器で四つ一組を入れ子にした食器のこと。「五器」は御器と書くのが正しい。

四つ五器のそろはぬ花見心哉

 こうして花見に来てみると、人々は幔幕を張ったり、歌舞音曲を打ち鳴らしたり豪華にやっている。他方私はといえば乞食僧のもつ四つ五器さえ満足に揃っていない食器をもって貧しくやっている。それでも花を十分に堪能しているのである。