芭蕉db
   大和の国を行脚しけるに、ある農
   夫の家に宿りて一夜を明かすほど
   に、あるじ情け深くやさしくもて
   なし侍れば

花の陰謡に似たる旅寝哉

(真蹟懐紙)

(はなのかげ うたいににたる たびねかな)

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 元禄元年。『笈の小文』の旅の途中、吉野の平尾村にて。ここに「謡」は謡曲『二人静』を想定している。

花の陰謡に似たる旅寝哉

 時は春、所は吉野。こうして旅寝をしていると、なにやら謡曲の主人公になったような気分になる。分けても吉野といえば義経と静御前の悲劇が思い出される。


奈良県吉野郡吉野町平尾。さりげなく、ひっそりと句碑が立つ(牛久市森田武さんより)