芭蕉db

日の道や葵傾く五月雨

(猿蓑)

(ひのみちや あおいかたむく さつきあめ)

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 元禄3年作。47歳。作句場所は不明だが上方であろう。

日の道や葵傾く五月雨

 五月雨が降っている。空に太陽はないのに、葵の花が陽の在り処をうかがっている。この雨雲で分からないが、晴れていれば西に傾いた太陽が見えるはずだ。
 ここに葵は向日葵(ヒマワリ)か蜀葵(タチアオイ)か分からない。後者の方が江戸時代人の趣味からすれば可能性が高いかもしれない。いずれにしても「向日性」を有しているので、作者は雨の日もその性質ゆえに日を追尾している葵の生き方を共感を込めて詠いだしているのである。