芭蕉db
    柴の庵と聞けば賤しき名な
    れども世に好もしきものに
    ぞありける
   この歌は東山に住みける僧を訪ね
   て西行上人の詠ませ給ふ由、『山
   家集』にのせられたり。いかなる
   あるじにやと好もしくて、ある草
   庵の坊に遣はしける

柴の戸の月やそのまま阿弥陀坊

(真蹟懐紙)

(しばのとの つきやそのまま あみだぼう)

草の戸の月やそのままあみだ坊

(真蹟懐紙)

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 貞亨元年(41歳頃)頃から死の元禄7年(51歳)までの間。作句場所は不明だが前詞に信をおけば京都であろう。

柴の戸の月やそのまま阿弥陀坊

 前詞が無ければ意味不明の句である。『山家集』には、「いにしへ頃、東山に阿弥陀坊と申しける上人の庵室にまかりて見けるに、何となくあはれにおぼえて詠める」とあって、「柴の庵と聞けば賤しき名なれども世に好もしきものにぞありける」とある。
 芭蕉もこの故事にならって、草庵の住人にこの句を贈ったというのである。句意は、あなたの住んでいる草庵のゆかしさはあの西行上人の歌のままの風情ですね。だからあなたはさしずめ阿弥陀坊ですね。